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カンボジアで育つ、日本の介護の心。最長寿国の日本が世界の介護をリードしてゆく。

酒井 亮 カンボジア日本技術大学副学長

福岡介護福祉専門学校卒業(介護福祉士、介護支援専門員)
福岡市内でデイサービスを経営するなど、25年間介護業務に携わる。
2018年よりカンボジアにて、日本で介護職に就く人材を育成。

カンボジア日本技術大学について教えてください。

当大学は2018年9月に首都プノンペンに開校した2年制の短期大学です。カンボジアの教育省に認可されている正式な大学となります。最大の特徴は、日本の皆さんにも知られてきた、外国人技能実習の制度を大学の中に組み込んでいることで、日本での技能実習が大学卒業の要件に入っています。カンボジアでは介護の概念がなく、新しい学問ですが、現在57名の学生が日本の介護を学んでいます。彼らは、今後カンボジアに訪れる高齢化社会に向け、日本から多くのことを学ぼうと頑張っています。

どのようなカリキュラムが行われているのでしょうか。

カンボジアの大学は、前期・後期それぞれ6ヶ月ずつのうち、4ヶ月以内にすべての規定カリキュラムを終了しないといけないという法律があります。加えて、カンボジアでは教員の少なさなどもあり、朝・昼・夜の3部制で、学生が受ける講義は1日3時間だけという大学がほとんどです。
しかし当大学は1日6時間、みっちりと講義を行います。規定カリキュラムは3ヶ月で終了しますが、前期から後期の間の3ヶ月はタスクベースドラーニングや日本に行くためのスキルを身に着ける実技を行いますので、大変濃密な学習ができる大学と言えるでしょう。

最初の1年で、日本語や日本の文化、介護の基礎知識を学びます。当校のカンボジア人教員は全員、日本語能力試験のN1もしくはN2を取得しており、学生たちも1年間でN4まで引き上げます。これはとても速いスピードです。

カンボジアの大学就学率は1%程度と言われていますから、当校に入学する学生たちは、カンボジアではエリートのような存在です。そんな人たちなので、地頭が良くて理解力があり、ぐんぐん伸びていく様子を毎日たのもしく見ています。

2年目は、日本へ渡って実際の介護施設での実習が始まります。これが外国人技能実習制度を利用したカリキュラムで、大学の単位としても認められています。1年間現場での実習を行い、単位を取得して、卒業論文を書いたら大学は卒業となります。

大学を卒業しても、技能実習に定められた期間は残っているので、そこから2年間は引き続き日本の介護施設での実習です。技能実習のトータル3年間を終えたら、カンボジアへ帰国となります。

最初の1年の技能実習を終えた卒業時に、日本で卒業式を行う予定としていますが、帰国後にカンボジアでの卒業式も行います。カンボジアでは、卒業式は1年後に行われることが通例となっており、基本的に卒業式が遅れることは当たり前のことなのです。

大学スケジュール

今後のビジョンをお聞かせください。

当校は、学長である石郡英一の強い想いから誕生しました。石郡は、介護を学問として成立させたい、「介護は哲学である」と考えています。医療は科学ですが、介護はあくまでも哲学だと。

生物の目的は種の保存であり、突き詰めると、捕食・生殖・子育てです。そこに老いた者や障害のある者との共存は含まれません。しかし、人類は生物の中で唯一、高齢者や障害者とともに生きるということを選んだのです。

これは愛に他なりません。これまで生きてきた人たちが、そういう愛ある文化を形成してきた。これを次の世代に引き継いでゆかねばならないのです。よって介護とは、人が人であるための証明であり、哲学であり、これを学問として成立させたいと考えています。

学問として研究を続けながら、世界中にこの大学を作っていく予定です。アセアン、中東、アフリカ、各国において幸せの価値観は違います。でも、高齢化社会はどの国にも起こることで、その時に排他的な価値観がなくなるように、人としての文化的で豊かな生活ができるように。そのために、介護の大学が各国に必要です。

また、介護の資格はまだ世界的には普及していません。介護福祉士のような専門職種として各国での資格制度を整え、どこの国に行ってもそれで仕事ができるように、国際ライセンス化していく構想も生まれています。

日本は世界における最長寿国で、充実した社会保障制度もあり、その分野でのトップリーダーと言えます。それでも今まだ経験を積んでいる最中で、財源が枯渇するとか、マンパワーがいなくなるなど、もがき苦しんでいます。しかし、その苦しんだ経験こそが、世界にとって絶対に必要な情報になると思っています。

カンボジア日本技術大学
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